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おことわり

・この創作は、パラレル設定で作られています。
・活動時期がずれているキャラクターも、すべて同じ時系列にいます。
・年齢を3?4章のインターバルに合わせました。
・ストーリー性を考慮して、一部キャラクターに記憶操作を敢行いたしました。
・このサイトでデフォになっているカップリングは、すべて成立しています。
・ただし、子供は出てきません(例外有り)
・おおよそ、世界観にそぐわない物品がいろいろと出てきますが、気にしないでください。
・時々書き手が茶々を入れますがそれも(略



温泉に行こう!


 「もう、こんな仕事ごめんですっ」
シグルドに書類を提出して、オイフェは一声そう言った。
「何を言う、布陣はオイフェの得意技だろう」
「布陣と旅館の部屋割りを一緒にしないでくださいっ」
「ふーむ」
オイフェの半泣きの声をさっくり無視して、シグルドが部屋割案を見る。
「家族単位ないしはカップル単位になっているだろうな?」
「なっているハズですよ、しないと血を見るのは私なんですから」
そばでその紙を見ていたディアドラが
「ぶっぶー」
と声を上げた。
「へ、なんか間違いでも?」
「シャナンはアイラ様と一緒のお部屋じゃだめ」
「ええっそんなことおっしゃられても、どこに彼を」
「あなたと同じ部屋になさい」
「わっ私はアレク・ノイッシュ・アーダン各卿と一緒ですよ」
「じゃあ、ひとつ部屋をふやして、ふたりになさい。
 とにかく、アイラ様のところにシャナンはだめ」
「ですが」
まだ何か言いたそうなオイフェに、ディアドラは
「オイフェ」
とほんやりと微笑む。なんとなく、彼女の体から、黒いものがゆら、とたった。
「上記おことわりの上から三つ目と五つ目、復唱」
「…年齢を3?4章のインターバルに合わせました。…このサイトでデフォになっているカップリングは、すべて成立しています」
オイフェが奥歯でかみ締めながら言うと、
「良くできました」
ディアドラは、シグルドの机にある、赤インクのつぼに、ぽち、とペン先をつけ、さらさらさら、と訂正を入れた。
「いかがですかシグルドさま?」
と見せられた真っ赤な部屋割りに、
「ああ…エルトの部屋にラケシス入れようともしていたのか…それはだめだろう」
とシグルドが眉根を寄せる。
「でも、ご一家でしょう」
オイフェが言葉を返そうとすると、
「オイフェ」
シグルドは、ふにゅ、と彼の鼻をつまんだ。
「修行が足りないなぁ、いくら自分の妻がセリスの仲間だからといって、こうも物分りが悪いと私はこの先が心配になるぞ」
「ねぇ」
ディアドラもほんやかと笑う。しかし、彼女はシグルド以上に、この微笑の裏で、なにを考えているかわかったものではない。
「…わかりましたよ」
オイフェが会議室の机に、模造紙とユ○ポスカの一式を広げて
「ディアドラ様の訂正で本当にいいんですね?」
と、「くろ」のキャップを抜きながら言う。
「かまわなくてよ」
ディアドラは朗らかに言って、オイフェはぶちぶちと、何か呟きながら部屋割りを書き始めた。

 <歓迎
    ファイアーエムブレム聖戦の系譜親世代+αご一行様>
とかかれた、いかにもな旅館の前に、三々五々とキャラクターが集まってくる。
「プラスアルファって、なんだ?」
荷物を小脇に抱えて、レックスが言った。
「さあ、特別にゲストでもいるんじゃない?」
と、アゼルが言い、
「あ、オイフェが部屋の鍵配ってる」
と、そのほうに行った。
「ご苦労様オイフェ、鍵貸して」
「こちら部屋の鍵と、避難経路図になります、お二人の名前はありませんが、お相手様の名前でご確認してください」
オイフェは目の下にクマを作った顔で、背後の掲示板をさした。レックスがそれにひゅう、と口笛を吹いて、
「オイフェ、考えてくれるじゃん」
「…ありがとうございます、ですがそのお言葉は、ディアドラ様にお願いします」
「どうしたのオイフェ」
「ディアドラ様、あのお顔に似合わず、部屋割りのだめだしがきつくて…」
「ああ…同情するわ」
とにかく二人は鍵を受け取り、それをかちゃんかちゃんとふりまわしながら、部屋の方に向かっていった。
 はあ。ため息をついたところに、
「オイフェ、みーつけた。鍵貸して」
と、シルヴィアが立っている。
「シルヴィアさんですね…えーと」
「やったぁ、神父様とおんなじ部屋だぁ」
部屋割りと鍵を照らし合わせている間、シルヴィはきゃらきゃらとはね飛んで、おおように入ってきたクロードに
「神父様、ほらほら、おんなじ部屋だよ」
と言う。
「おや…気を使わせてしまって」
「お気になさらず、こちら、部屋の鍵です」
「ありがとうございます
 さあシルヴィ、いきましょう」
「はぁーい」
そう言う二人の背中を見送って、ふはぁ、とため息をつく。そこに、
「お疲れ様オイフェ、大変そうね」
と声がかかる。顔を上げると、フュリーがいた。余りに突然の遭遇で、発音が思わず狂う。
「ひゅ、ひゅ、フュリーさん」
そんな、発音が狂うほどの彼の胸のうちなど、ひゅ、じゃない、フュリーはすぐに知ることもなく、
「どうしたの? 大変なら、手伝いましょうか?」
といつもの宮仕えスマイルである。
「いや、大変ではないのですが…部屋の鍵と避難経路図をどうぞ」
「あら、そう」
鍵を受け取って、フュリーは部屋割りを確認して、「あら」と声を上げたきり何も言葉がない。
「どうしたの、フュリー、あなたは先に行って、レヴィン様をお待ちなさい」
追うように入ってきたマーニャがそれを背後からのぞきこむようにしていい、フュリーを優しく送り出す。すでに、どう集まったものか、複数の手が必要な人数になんなんとしていた。
「オイフェ、私が手伝いましょう」
「有難うございます…」
フュリーに鍵を渡すとき、彼女の隣にいるのがレヴィンでなくて本当に良かった。オイフェは心底からそう思った。そうじゃなければ、フュリーに鍵を渡した時点で自分は職務放棄でもしたい衝動に駆られていただろう。
「遅いわねぇ…王子は」
マーニャが難しい顔をする。
「ラーナ様がおられるから、欠席はないでしょうけれども…」
「レヴィンさまは遅くなりそうですか?」
「レヴィン様には『レヴィン様時間』があって、決定時刻の前後二時間みないと…」
「に、二時間ですか」
「ええ、まあ。なにぶんああいうかただから」
マーニャは、こしょこしょと髪をかいた。

 「むー…」
部屋割りのコピーに複雑な思いをしているのが何人もいた。ためつすがめつで、うなり続けている。
「もう決定なんだから、あきらめちゃどうだい」
と呆れているのが、同室になったベオウルフ…となれば、うなっている相手は当然、エリオットである。ちなみにこの人選は完全に書き手のシュミである。
「いつかの倉庫に比べりゃ天国じゃねぇか、おまけに角部屋で、精霊の湖が良く見える。男二人より、どこか雰囲気いいカップルに当てりゃよかったのに」
「納得できん!」
「文句はそれ作った奥様に言えよ」
ディアドラがつくったコピーは良くできている。カップルの部屋には、女性の名前しか書いてないのだ。
「こんなに離れていては、夜這いも無理ではないか、階を変えてしまったら、ばれる可能性が大きいんだぞ」
「夜這い…って」
「風呂のぞきに夜這いは団体旅行の醍醐味だろう」
「往生際の悪いところ、全然治ってねぇな」
「ははは、治ってたまるか」
「つーか、以前書き直しまでされた創作であんなにけちょんけちょんにされたのをお忘れか」
「何のことだ、俺は勝った。それ以上に何があった?」
ほとんど開き直りに誓いエリオットのバカ笑いに、ベオウルフは処置なし、と後ろ頭をかいた。
「…またこのバカ王子のお守りかよ…逃げちまおうかな」
いや先生、逃げられたら困るのでいてあげてください。

 部屋割りのコピーでうなっていたのがまだいた。
 エリオットの「天敵」、エルトシャンである。さすがに、妻グラーニェ、息子アレス(3つ)の前で、感情をむき出しにすることはなかったが…
「まあ」
その紙をちらりみて、
「ラケシスさま、こんなにこのお部屋から遠くては、さみしいですわねぇ」
とグラーニェがおおようにいう。それにエルトシャンは苦い顔で答えた。
「寂しいだけでいいならいいのだがな。しかし何故こんな部屋割りにしてあるんだ?」
「何かご事情でもあるのかしら?
 もしかしたら、ご一緒でなかった間に、お好きな方でもできたのではありませんこと?」
ぐさっ
背後から魔剣でもさされた顔で、
「は、はは、まさか、あの跳ね返りが」
と、エルトシャンは言われたくない想像に引きつった笑いを浮かべる。しかし、奥様はカンがよろしくできているのだ。
「ええ、きっとそうに違いありませんわ。嬉しいこと、私ずっと心配しておりましたの。
 よい方ならいいわね、ねぇ、アレス」
「あい」
いずれ来るとは覚悟していたが、まさかこんなところで見せ付けられるかもしれんとは。
 エルトシャンは、orzの形で固まってしまった。
「…陛下?」
「ちちうえ、おうましてくれるの?」

 自分の部屋に不満があるのが、もう一人いた。
「何でアイラと一緒だとだめなのさっ」
シャナンである。
「だって、僕オイフェが部屋割りするからって、頼んだんだよ、アイラと一緒がいいって。
 レックスの奴がいじめに来たら、追い払ってやるって」
「盛り上がってるところ悪いけど、シャナン」
同室のデューが、袋の中の金貨を並べながら言った。
「うわさだけど、最終的に部屋割りを決めたのはディアドラ様らしいよ。
それに」
「それに、なに?」
「馬に蹴られて逝ってよし、でもいいなら、アイラの部屋に行くのとめないけど?」
「…じゃあ、夜こっそり行く」
「…まあ、せいぜいがんばってよ、オイラしーらない」

 あらかた人が集まって、にぎわいだした旅館に、全館放送の始まりを告げる音が響く。
ぴーんぽーんぱーんぽーん。
<本日は、精霊の森にあります仮想空間内常設旅館、『マイラの末裔』亭にようこそおいでくださいました。
 当館は、全室が精霊の湖を望んだ、豪華レイクビューのお部屋となっております、ぜひ、その風景をお楽しみくださいませ。
 幹事団を代表して、ディアドラが二、三、お約束事などご説明いたします。
 お食事は、ご夕食ご朝食ともに各部屋でお召し上がりになれます。各お部屋は係りのものがつきますので、お好きにご用命くださいませ。
また、皆様お入りになったロビー階を階段で降りますと、レイクビューの大浴場と、併設して露天風呂が用意されております。一日いつでも何度でもご利用できますが、日没を境に一部入浴制限を行うことがございます、あらかじめご了承くださいませ。 ご清聴有難うございました、引き続き、楽しいひと時をお過ごしくださいませ>
ぽーんぱーんぽーんぴーん。

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