あのひとを、さがして

下手な鉄砲ではないのです。(そうかもしれないけど。)
ちゃんと基準があるらしいのです。(そうじゃないようにも感じられるけど)
ここでは、源君がかかわった(きゃ)女性達をほぼ出てきた順に列挙しておきます。
感心しちゃうのが、「親子丼」が未遂に終わっているということ(!・笑)

葵の上(あおいのうえ)
 父・左大臣 母・三条大宮

主役となる巻名より称する。頭中将の同腹の妹。源氏と元服と同時に結ばれた。が、年上であることや、将来の后がね(皇太子妃候補)であったというプライドなどによって、旦那と夫婦らしいコミニケーションがとれないことに悩み続けていた(らしい)。結婚10年にして懐妊、しかし、その頃よりもののけに悩まされ、夕霧出産直後にとり殺される。


空蝉(うつせみ)

源氏の詠歌より称される。方違えにより源氏が訪れていた伊予介の後妻。このとき、源氏と関係を持ったかいなかについては諸説あり。伊予介死去ののちは、年上の義理の息子から言い寄られ(源氏「ひと事とは思えないよな(笑)」)、それを苦に出家したらしい。事情を聞いた源氏に引き取られる。(また、彼女の弟・小君と源氏との関係にも、諸説あり。(汗))


軒端荻(のきばのおぎ)

源氏の詠歌により称される。比喩的に「背が高」かったらしい。伊予介の娘、よって空蝉とは義理の母娘になる。空蝉を忘れかねた源氏が再度邸宅に侵入した際、空蝉と勘違いして関係してしまうことになる。ただ、そのとき、態度があまりにも歓迎ムードありありだったので逆にさめられ、その後手紙を出しても相手もされなかったという可哀想な結末。


夕顔(ゆうがお)

文中かわされた歌から称される。惟光の母(つまり自分の乳母)を見舞った先・五条の家に身を寄せていた謎の貴婦人。しかしてその実体は、頭中将の愛人の一人で、本妻からの迫害にたえかねて身を隠してたのだった。源氏の計らいにより宿とした廃虚(モデルあり)で、謎のもののけにあって頓死する。のちの源氏に、「いきていれば明石ほどにも扱ったよ」といわしめた人物。彼女の娘が玉鬘。


末摘花(すえつむはな)
 父・故常陸宮

源氏の詠歌により称される。故常陸宮のわすれがたみ。経済的支援がなくなり困窮の一途を辿る彼女の身を案じた源氏のもう一人の乳兄弟・太夫命婦(たいふのみょうぶ)がひきあわせた。源氏が何を話しても顔を覆って「むむ」とつぶやくだけという、身分と髪の毛だけがとりえという女性。怒肩で痩せ細って、顔が長くて鼻が高くて赤い(ゆえに末摘花=紅花)らしい。俺以外に誰もこの姫を世話できないよ、という源氏に引き取られる。


若紫(わかむらさき)
 父・式部卿宮

登場巻名より称する。式部卿宮は藤壺女御の兄に当たり、ゆえに若紫は藤壺女御の姪に当たる。病気療養に訪れた北山で、祖母により本妻の目から隠されそだてられているところを源氏が発見、以後読者よりロリコンだの誘拐犯だのいわれる基となるような勢いで、源氏の私の邸宅・二条院にひきとられる。源氏による理想の女性教育を施され、第一の貴婦人として重く扱われる。晩年は紆余曲折を経て出家願望という自立心が芽生えてゆくが、最期まで源氏にから出家の許しがでなかった。


藤壺女御(ふじつぼのにょうご)一名薄雲女院(うすぐものにょいん)
 父・先帝

内裏での居住により称される。先帝の第四皇女。源氏十一歳の時、桐壺更衣を忘れかねる桐壺帝のために入内となった。当然、その容貌は桐壺によく似ているという。桐壺帝の寵愛をあやまたず一心に受けるが、これに限っては世のそしりもなく、皇子出産をきっかけに、宿老の他女御を押し退けて中宮となり、また、その皇子・冷泉帝即位に際しては女院となり、息子の後宮の管理にいそしんだ。源氏とその一派の中枢であるが、三十七歳の時、おしまれて世を去る。源氏の永遠の女性、このサイトでいうところの「あのひと」。


源典侍(げんてんじ)

桐壺帝の典侍(ないしのすけ・天皇と臣下のパイプ役)。登場時すでに還暦間近(この時代、四十から老人扱い)でありながら「現役」という、「灰になるまでの女心」が具現したような存在。源氏と頭中将の間でくらくらのおババ心を演じるが、実は本命・修理太夫(すりのたいふ)をしっかりキープした上でのことだったらしい。彼女の出現するひと下りは、物語では珍しいコメディ仕立てになっている。のち出家する。


朧月夜(おぼろづきよ)
 父・右大臣

文中、彼女が口ずさんでいた歌により称される。右大臣の六女、長姉は弘徽殿女御。春宮だった朱雀帝の后候補だったが、宮中の観桜会のあった夜に、源氏とであってしまう。その後、源氏とのうわさによって入内ではなく、尚侍(天皇秘書・表向き妻という扱いはできない)として出仕する。それからも源氏との関係は途絶えなかったが、朱雀帝は「相手が源氏では仕方のないことだと思うよ」と、事実上黙認していた。が、それが弘徽殿女御の逆鱗に触れることになり、須磨下りの直接の原因となる。帰郷後にも一度、焼け木杭に火がついたりしたが、結局は朱雀帝の恩情に触れた彼女が出家して終わった。


六条御息所(ろくじょうのみやすどころ)

居住していた邸宅により称される。早世した先の春宮(桐壺帝の弟)の妻。姫が一人。六条に居をうつしてからは、その教養に貴公子らが集うサロンが形成されていた。恋人になった源氏が6才も年下だとか、かりにも一度は后にも期待されていたプライドが、自分から離れてゆく源氏を見守ることしかさせなかった。その心の乱れが強くなり、終いには幽体離脱の真似事までやらかしてしまう。確実に取り殺した人一人、おそらく取り殺しただろう人ひとり。没後も源氏とゆかりある女性達にとりついて、紆余曲折の原因をつくり出す。


秋好中宮(あきこのむちゅうぐう)

文中の表現より称される。六条御息所の娘。母を悩ませる源氏に対して、あまりいい感情はもっていなかったらしい。一度伊勢に斎宮として下向し、帰郷後、源氏の後見を持って(実は源氏は子供が少なく、後宮にからめた政治活動には頭中将に一歩先んじられていた)冷泉帝に入内する。紫の上と、春と秋とちらがいいかという論争をして、この人は「秋が好き」言った。


花散里(はなちるさと)

登場する巻名より称される。姉が桐壺帝に仕えた女御の一人・麗景殿。登場場面は少ないが、須磨下り直前の源氏の荒んだ心をほぐしたアットホームな女性。趣味・特技は染め物。源氏帰郷後、夕霧や玉鬘の母代わりをたくされる。物語後半では、若紫についで重んじられた。


明石の御方(あかしのおんかた)
 父・明石入道

出身地より称される。須磨に下った源氏が、父・桐壺帝よりいただいたおつげにより住み替えた明石で、名士・入道に育てられていた一人娘。彼女の子供から天皇皇后がでると信じていた入道の計らいで源氏と結ばれるが、懐妊が確認されたところで源氏が帰郷。娘出生後上京するが、娘を、後宮での政治活動を視野に入れた源氏によって他人に預けられるというつらい経験もある。のち、入内した娘の宮中での世話人として、おもく扱われる。


朝顔斎院(あさがおのさいいん)
 父・桃園式部卿宮

源氏の従姉にあたる。朱雀帝時代の賀茂の斎院。任じられる前も後も、源氏からの求婚がたえなかったが、結局結ばれなかった、物語中唯一の奇特な女性。


玉鬘(たまかづら)
 父・頭中将 母・夕顔

源氏の詠歌より称される。本名るり。夕顔の事件は、仕えていたものにとっては主人の失踪であり、寄る辺をなくした乳母の一家に守られて、筑紫で育つことになる。やがて妙齢となったが、土地の名士との結婚を拒んで急ぎ上京、初瀬観音で、彼女らとの再会を祈願していた夕顔の侍女・右近と再開する。源氏に娘として引き取られたが、父が頭中将であることに引け目を感じた源氏が、尚侍の体裁で冷泉帝のもとにあげようと画策していた矢先に、髯黒の右大将なる妻子ある男性に横どられる。それが原因で先妻と事実上離婚となった髯黒との間は順調で、尚侍の職も五十歳ごろ、娘に譲るまでつとめあげた。


女三宮(にょさんのみや・おんなさんのみや)
 父・朱雀帝 母・藤壺女御

朱雀帝の第三皇女。母・藤壺女御はあの藤壺とは別人。父にとっては出家の障害となっていた最愛の娘。若紫の従妹にもなるという「むらさきのゆかり」にもほだされて(おもてむきにはもうすこし事情が深い。ようは、すでに時の源氏にとって紫の上は公に妻としては扱えなかった)、親代わりともいえる立場の源氏に降嫁してきたが、「身分」という武器で源氏の妻達の力の均衡を壊滅させたリーサルウェポン。本人の人格は、風流も情緒も解さない無感動と表現されている。紆余曲折あって薫を出産するが、その直後、生涯最初の自らの望みによって出家する。