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「連理行」の解説


□このページは…□
 「連理行」の最初のページでこれはだめだと引き返された方で、「でも『探しに』の外伝だから中身だけでもチラッと知りたい」という方のための解説です。
 このページは怖くないので安心してご覧ください。

■舞台設定
 この創作の舞台になっているのは、「そして君を探しに行くver4.x」(以下「探しに4」)の中で、フィンの郷里として清原が独自に想定した「アレン」という街です。
 具体的な場所をゲーム的に言うと、「聖戦」では7章レンスター城付近でスピードリングをもらえる村、「とらなな」敵に言うと、東ルート17章「5月の雨」で、援軍を申請した場合にランダムにレジスタンスの発生する民家の集まったあたり、ということにしています。
 西側にアルスター⇔レンスターへの街道があり、北にコノート方面の街道があり、東側に、「とらなな」の迷いの森に通じる森林がある、まあ、土地自体は比較的どこにでもある小領主の領地です。
 この街の政策っぽい、全体的な進路を協議決定しているのは、領主とその一族です。
 基本的に、領主は騎士なり官吏なりの立場でレンスターに仕えています。
 治安は、ワリといいほうです。賑わいもそれなりです。

□「連理行」の内容の概略
 この創作の主な時期設定は、「僕(ら)の夏休み」の当年の秋?翌年の春を想定しています。大体フィンは9?10歳ぐらいでしょうか。この頃王宮で行儀見習いを始め、「探しに4」で12歳でキュアンの従騎士になる、というつながりになっています。キュアンとの年齢差は、ラケシスとエルトシャンに準じます(サイト設定で9歳差)。しかし、残念ながらこの創作でのフィンは子供なので、余り個性のある行動はしていません。
 「連理行」の主役は、フィンの両親(オリジナルキャラクターです)のクールとムーナです。
 父親クールは王宮の近衛騎士団の団員で、この創作の時点ではまだバーハラにいるキュアンの側近になる予定の人で、すでにデュークナイトの資格を持っています(でした、かな)。創作には目の色しか書きませんでしたが、見た目は聖戦後半フィンとほとんど同じだと思ってください。所有スキルは追撃です(憶測)。
 母親ムーナは、レンスター軍魔法部隊(竜は魔法に弱いからおそらくあるのではないかと)の一人で、セイジの資格を持っています。プリーストも含めた魔力行使者の中でも特に魔力が高く、後進のマージの育成にも余念のない、とらなな設定に準じて、最後には光A魔法の使用許可を得た人です。所有スキルはおそらく祈り。
 そういう二人は、ごく普通の恋愛をし、ごく普通の結婚をしました。
 そしてサイト設定でのグラン暦741年1月上?中旬、フィンが生まれます。その年は、比較的温暖な気候のレンスターが大雪に見舞われ、彼が生まれた日にも、雪がちらつくような日でした。
   (本編より抜粋)
「ずっとレンスターにいるけれど、こんなに雪は見たことないわね」
「…そうだな」
「ただ白いだけだと思っていたけど、その白は透き通っていて、とても綺麗…」
 透き通る雪の白、その美しさ。
 天がその美しいものを、あなたのために降らせているのよ。
 白くて美しい、私達の宝物。
 フィン。
 それが、あなたの名前。
   (抜粋ここまで)

 さて、ムーナはクールと結ばれた(結婚より先の話です)時から、自分の持つ魔力が変調してしまいました。女性の魔力は処女性と不即不離の関係にあるので、時々、そう言うことがあるようです。
 その変調の内容は、「魔力を杖なり魔法なりで行使すると、魔力を使った分寿命も減る」という、かなり困った内容です。
 同僚は、軍から身を引いて王妃アルフィオナのサロンに出入りする貴婦人になるか、あるいは軍でマージの教練をするにしても、座学の講師になれと進めることもありましたが、ムーナはクールだけ戦場に出せないと、この忠告を無視し続けていました。
 創作が開始された段階では、魔力を行使し続けた影響で、魔法を使った後は疲労を取るため休養しないと動けない人になっています。

 ここから少し話がダークになってゆくのですが、三人組がお忍びの夏休みを過ごしたその秋、クールは王宮に運ばれた調教される前の軍馬の群れのトラブルを静めようとして、逆に裸馬から落馬するという事故に遭います。首と背骨を折った即死状態でした。
 フィンを跡取りとして正式に擁立していなかったアレンの一族は、長老たちの合議での街の運営…領主不在の場合、そうすることはしきたりでもありました…を提案しますが、ムーナはすぐには首を縦には振らず、将来、成人したフィンをクールの跡取りとみなが認めてくれるならという条件で妥協します。
 しかし、それが承諾できない手合いが出てきて、ムーナはいろいろ悩むようになります。
 フィンはこの時点で、ムーナの、もしかしたら、自分の考えに反対する手合いからフィンに危害が及ぶだろう可能性も見越されて、王妃アルフィオナに預けられ、王宮の行儀見習いになります。

 ムーナに光A魔法オーラの使用許可が下りたとき、ムーナはマージの教練と自身の修練の結果、魔力の行使後は一日は昏睡するほどになっています。「探しに4」の文中で、フィンがちらりと母を回想するシーンがありますが、彼の母に冠する記憶は、この辺ぐらいしか残っていないのです。
 結局、ムーナは、ただでさえ魔力=寿命という特殊な体質だった上に、ある事情でオーラを詠唱せざるを得ない事態になり、ソレが命取りになります。
 時期こそ少し違えども、二人はアレンの土地の中にある、小さな丘に同じように葬られ、墓標として同じ木が植えられます。その枝と幹は、成長するにつれて、寄り添うようにお互いに向かって傾きはじめ、最後には、よく見なければ二本の木とは分からないほどに、根も幹も枝も一体化していたのでした。

 「二人」から落ちる木の実は、その後ラケシスがいくつかを拾い上げ、庭師により若木へと育てられ、アレンの領主館の庭や教会の庭、街の中の人の集まるような場所に植え替えられ、人々に親しまれるようになりました。
 もちろん、生きていた頃に、二人が落としたたった一つの木の実も、伴侶を得て木の実を落としたわけですが、それはまた、別の話で。

■レトリック
1.タイトルの「連理行」について。
 「連理」については、いまさらあれこれ述べ立てるまでもありません、白居易「長很歌」のも出てくるフレーズのアレです。ウェブ辞書で「連理」を引くと、
(1)一本の木の枝が他の木の枝につき、一本の木のように木理が同じになること。
(2)夫婦・男女の仲がきわめて親密なことのたとえ。
という、ある種学術的な意味もあったので、少しおどろきました。
 「行」というのは、漢詩の一形態で、「古歌・楽府」に属する、みたいなことで、つまるところなんとなく雰囲気でつけただけです。
2.「探しに4」に還元される要素
 まず、フィンの存在と、彼の持つ母の記憶は、5章後に相当するアレン時代でちょっと出てきます。
   (本文抜粋)
 この街を一族の誰か年長者に帰させるのかと言う一族に対して、やっと物心ついた私を一応領主とさせて、年長者はそれを成人まで守り立ててほしいと日々懇切に説いて回る母の面影は、部屋にあっても何の楽しみもなく、それは物寂しそうだった。だから、私の記憶の中の「母」は、いつも何かを沈思している、そんな姿ばかりだった。
   (抜粋ここまで)
 この係争は、バーハラから帰ってきたキュアンの鶴の一声でおさまり、アレンは一時アルフィオナ管理となり、レンスターに戻ったフィンが後で正式に継承することになります(実は、「最低正騎士であること」「結婚をしている(婚約者がいる)こと」が継承の条件となっているのですが、杞憂というものでしたね)。
 それと、ムーナの妹にレーナという子がチラリと出てきます。レーナは、レンスターに帰ってきたフィンが従者とした双子のブラン・シュコランの母親です。

□固有名詞のネタ元
 頭の中でひねれば出てこないこともないのですが、おそらくフィンの名前の出所になっているケルト神話の英雄フィン・マクールは、幸いにも人間関係についてネタ元に困らないほどの情報量があるので、便乗しました。
 まずクール。フィン・マクールは、「クールの息子(Mc)フィン」という、とっても分かりやすい意味なので、迷わず父親の名前に決定。Mc=息子という使い方からすると、某ファストフード店は「ドナルドの息子」ですよ。
 ムーナ。こちら、やっぱりフィン・マクールの母親。手持ちの一番簡単な資料では「マーナ」となっているのですが、それだとラナの代替キャラのマナとかぶるので没。より原語に近いと「ムィルナ」とも読めるらしいのですが、語感がなんとなく変なので、簡単に。ネタ元さんの出自はケルト神ヌァザの孫なので、フィン・マクールは神の血も持っていることになるのですよ。
 ブランとシュコラン。これはそのままです。フィンとの続柄(従兄弟)も同じです。ただ、ネタ元では、この子ら犬です。母親(ムーナの妹)は、ティレンといいますが、レンスター関係の女性が、アルフィオナ・セルフィナ・ナンナと言った具合なので、脚韻をふませるためにここは作りました。
 土地の名前アレン。これも、実際にフィン・マクールの領地の名前と同じです。ネタ元では、さらに、中身がバスク家・モーナ家に別れて拮抗しているという政情なのですが、そこまではさすがに話に盛り込むことはなかろうと、みんな「一族」で統一してますが。

 ネタ元を漁ってゆくと、いろいろ面白いことにもぶつかります。
 フィン・マクールは最初「ディムナ」という名前だ、とか。武名を上げるために倒した怪物は「ターラ」にいた、とか、息子の名前は「オーシン」(一説には「フェルグス」も)だとか、フィアナ騎士団の部下の一人(一説には「甥」にもあたるらしい)に「デルムッド」がいて、こともあろうにフィン・マクールの後妻になるはずの「グラーニェ」と駆け落ちした、とか…

とりとめもなく、「連理行」の解説、終わります。
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