PennyRoyal Sleeve notes

午前1時半のオプティミスト

 
「ペニーロイヤル」好評で宣教師兼作者としてはうれしいかぎりっす。
さて、ここで、いろいろ補足事項など出しておきます。
御理解の一助までに。

<で、結局ペニーロイヤルがなんだというの??>

ペニーロイヤルというのは、本編でも出た通りハーブの一種です。
一般的には、キャットニップのような「猫まっしぐら」ハーブの一種として知られているようですが、今回取り上げたよう側面は、ひっくるめて難しく言うと「通経(つうけい)作用」といいます。生理不順に効果あり、と言うことです。
しかし、裏を返すと、「とまった生理を再び呼ぶ」作用なわけですから、とまった原因が妊娠であれば、その状態を中絶させる効果が当然ながらあるというわけで、資料には「妊娠初期の女性には絶対に与えないこと」とただしがきがついているのであります。そういう作用を持ったハーブはけっこうあります。やっぱり、女性がその歴史を育んだ故に、と言うことでしょうか。(ヨーロッパの某所ではつい半世紀近く前まで堕胎罪というものが法律的に成立したそうですから、医者を頼るよりは、というなのでしょう)
本編でのイシュタルは、侍女達が外見だけで察知できたのですから、かなり時間が立っていただろうことは予想できます。中絶と言うのは、胎児が大きくなればなるほど母体が危険なのは昔も今もかわりませんで…
<ペニーロイヤルを書こうと思ったわけ。>
私が「イシュタル×ファバル」という組み合わせを知ったのは、99年の2月だったか、あるメー友が「これうちの子世代カップリングね」と提示したなかに書かれていたのが最初です。「まあつっこみは後にしてくれ」そんなことを言われてその後、メー友が風邪を引いたという話を聞いて、「お見舞いに書こうかな」と思ったのでありました。その後、ホームページの1234カウントの申告を受けたので正式にキリ番として採用して現在にいたっています。
そうそう、アイデューはどうなった?
<コンセプト>
イシュタルの話を書こうと思ったいきさつはそれとして、「どういう接点が?」と考えました。
正直のところ、ゲームでの接点(ブルームの娘と同じく傭兵)しか考えられませんでした。面識はあるけれどそれ以上はないような気がして。
それが、ネタを練っている間に、「あ、あるじゃないか」と閃いたのです。
ファバルは孤児のために傭兵仕事をしています。イシュタルは子供狩りに遭った子供を解放しました。
「救われるべきちいさな命」、それが二人の間に共通するキーワードだったのです。
おまけに、イシュタルは、ユリウスの公称愛人とも言うべき立場になっています(まだ愛人ですが、そのうち正式に皇太子妃になるべき人物でしょう)。
まず、ゲームと違ってイシュタルが生きていたとして、「はて、ここでユリウスの落胤なんて出てきたらどうなるかな」と。
「時代の果てに追いやられるべき魂を持っているかも知れない、救われるべき命」
それを前にした時に二人はどういうこうどうをとるのでしょうか。
それはたてまえとして、「イシュタルって、ユリウスの愛人だったんだろ? 生き残っていたとしてだな、子供でもできてたらどんなもんだったのやら」という心の筋肉ですわね。
<ベースメント・極上の赤を日にすかした赤>
実は、この「ペニーロイヤル」には、下地として別の物語が入っています。
それは、イシュタルがフリージの生活の中で回顧している「大きいねえ様」とその事情です。
これをティルテュと解釈した人は少なくないでしょうし、実はそうです。
イシュタルと少し面識もあったでしょう。もちろん、細かい話は、当時まだ子供だったイシュタルにはわからない話だったでしょうが。
うちのティルテュは、5章直前のザクソン城(グラン暦759年12月射手座うまれ)でアーサーを出産、そのごリューベックに至るまでの間にティニーを受胎、出産はシレジアで暮らしている妹エスニャのもとで(グラン暦761年3月魚座うまれ)、ということになっています。(さらにいえば、エスニャはティルテュと同時期にフリージを出奔しています。シレジアびととカケオチですけどね。)
その後、アルスターに本拠をうつしていたフリージ公爵家に拉致られたわけです。おそらくブルームの指図で、彼に悪意はなかったでしょう。どこにいても何していても、妹だったわけですね。
ティルテュはもともとヒルダとはそりがあいませんでした。(これは、ラケシスとグラーニェとはまた事情が違います。)うちのヒルダは自分より出っ張った釘は叩きのめすタイプの人ですから、気丈な小姑に嫌がらせをしたものとおもわれます。ひとえに自分の前に土下座する姿が見たいためだけに。
ティルテュは、出奔してからの思い出を、誰にも話しませんでしたが大切にしていました。ティニーの父親の名前さえ誰にも言わなかったのです。もっとも、いったら最後政争のネタになりそうな名前ですけどね(世が世なら皇弟だもの)。それがさらにヒルダは気に食わなかった。思い出と、自分には見える未来の微かなビジョンを矜持にして、今だ自分の前にぬかづかないティルテュに、ヒルダは一番えげつない方法で思い知らせようとしました。
それが、イシュタルの「大きいねぇ様の記憶」です。ティルテュは、アルスターを訪れる貴族たちへの、もてなしの一つになっていたのです。ヒルダは、
「あのおチビの父親の名前も覚えていないあばずれのあんたなら、適当に楽しませて帰すなんて朝飯前だろ」
その思い出が文字どおりしみ込んでいる身体を、他人に与えることを強要したのでした。
ハーブ・ペニーロイヤルの効用を思い出しましょう。そして、堕胎と言うことは女性の身体に大変なダメージを与えます。ティルテュは最終的には、無理な堕胎をくり返した挙げ句に、そのダメージが積み重なってなくなったのだと考えたいのです(もっとも、堕胎も流産も当然妊娠もしたことのない私には想像の域でしかないのですけど)。
<ベースメント・午前一時半のオプティミスト>
さて、こんなことをふまえてふと、私はカベにぶちあたりました。
「こ、このままじゃファバル、ただのいいひと。か変人だ」
つまるところ、私はファバルの告白の機会を見失っていたのです。イシュタルの方も、彼の存在に馴染んで来はじめて、いい頃だとはおもうのですが、ファバルの方でタイミングをのがしているようにも感じられます。
どんなかおでファバルはその思いを告白するのか、そして、それでも過去を振り向きがちなイシュタルはなんと反応するのか、その後のあらましまでできたところでも、「そこ」だけのために私に神様はなかなかおりてきてくれません。
現在のサイトのページで言えば3ページ目のなかばまで作った下書きだけをぽいと投げ出して(いまだ紙に下書きと言うものをしないと気がすまない女)、しばらくすぎていました。
そこで。
できたばかりのこのHPにおいでになったことがある人で覚えてらっしゃるのなら、「まにまにの記」のなかに、「1999年3月8日午前1時30分」というひとくだりがあったのを思い出して下さい。
細かいことを言うとまたなんだら問題が出るのでそれとして、突然告白というものをされて、私は決定的なスランプと軽い神経衰弱に一度は陥ってしまったのです。(いやまじで。)
このスランプは一ヶ月ぐらい続きました。そして私は、
「ああ、こういうことなのか」
と、吹っ切れてしまったのです。
そのときのファバルがなんと言って口説きにかかったか、そこまではまだおぼろげとしていましたが、その際のイシュタルの心理っぽいものだけが、何となくわかった気がしたのです。もっとも、私とイシュタルと、置かれている立場は全く違いますし、吹けば飛ぶような私にくらべて、イシュタルの存在と言うのはとても重いです。ただ、「何か」を引っ掛けて、目の前の言葉に慎重になっているところで、言った側は、そんな「何か」なんて全然気にしていないというのは、その後のやり取りから分かりました。
そして出来上がったのが、あのファバルの告白のひと下りで、そしてそれからファバルの性格や言動もだんだんかわってゆくのでありました。
今考えてみれば、「その時」のイシュタルの心の動きについて、もっと詳しくしても良かったかも知れませんね。当時の私には無理だろうと思いつつ。
<おまけ・黄金の都亭>
ついでに、「裏ペニーロイヤル」のことも少々。
ペニーは私の創作の中では珍しく爽やかに終わりましたが、好事家の私としては、そのあとの二人についてちょいと気になることが出てきたのでありました。
「やっぱり、時間が立てば、そういうことになるよねぇ」
「でもさぁ、イシュタルって、いろいろ吹き込まれてるはずだよね。ファバルよりいろいろ知ってるんじゃない?」
「逆に言えば、ファバルって、『おねぇさん』相手にしたことがあるのかな?」
「そういうファバルと百戦錬磨のイシュタルとが、さあご同衾になったところで、どっちがリードするんだ?」
「でも、イシュタルにとってはセカンドバージンというやつで、それはそれで大切にするとか? 私よくわかんないけど」
「イシュタルの事だから、わかっててもリードされるでしょ」
「ファバルも満更知らないわけじゃないだろうし…」
こういうネタ練りを聞きつつ、誘導尋問のような取材に快く?応じてくれた教祖に感謝(笑)。また「台所家」で寿司食いましょう(笑)